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夏目漱石「夢十夜」第一夜 より
「すると石の下から斜に自分の方へ向いて青い茎が伸びて来た。見る間に長くなってちょうど自分の胸のあたりまで来て留まった。と思うと、すらりと揺ゆらぐ茎の頂に、心持首を傾ぶけていた細長い一輪の蕾が、ふっくらと弁を開いた。真白な百合が鼻の先で骨に徹こたえるほど匂った。そこへ遥はるかの上から、ぽたりと露が落ちたので、花は自分の重みでふらふらと動いた。自分は首を前へ出して冷たい露の滴る、白い花弁に接吻した。自分が百合から顔を離す拍子に思わず、遠い空を見たら、暁の星がたった一つ瞬いていた。
「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。
size/ 約66×93㎝
material/ 大分県産楮和紙、墨, 胡粉、雲母
※裏打ち加工なし、未表装の状態です。額入れ、パネル張りの必要な方は別途ご相談ください。
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